スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

背中の誓い(ver.K)

クラウザー&アルフォンス_029

「じゃあ外で焚き火の番をしているから」

 そう言って、ベースキャンプの表に出たはずじゃなかったのか、俺は。
 それから30分もしないうちになぜ、キャンプの中で、硬いベッドで、白うさぎを抱いて寝るなんていう愉快な状況になっているのか。

 “白うさぎ”とは、言うまでもなくアルフォンスである。
 これは俺がアルフォンスに出会った時に付けた……一種の暗喩的あだ名だ。本人には言っていないが。だいたい俺は馬鹿にした意味で付けたのに、こいつときたら「可愛いあだ名だね!」なんて喜びそうじゃないか。ちなみに、「アルって呼んでね!」と言われているが、俺は決してそう呼ばない。愛称で呼ぶというのは、つまるところ親愛の証だと思っているから。それもなんだか癪に障るので、長くて面倒くさい名前だが、アルフォンス、とフルネームで呼んでいる。
 で、なぜ白うさぎなのかというと、別に深い意味はない。体色が薄く、髪の色が銀色っぽいから、白。モンスターに遭遇したときの逃げ足が異常に速いのと、しょっちゅうぴょんぴょん飛び跳ねて何か喜んだり怒ったりしているから、うさぎだ。我ながら適当だな。でも、俺にとってこいつはどうでもいい存在のはずだった。だから適当でいい。

 その白うさぎは、俺の腕を枕に熟睡している。
「…………」

 参ったなぁ。
 面倒なことは嫌いだ。面倒な奴も嫌いだし、そもそもハンターになったのは、ただ目的のモンスターを狩って狩って狩りまくれば評価が上がって金持ちになれるからだ。簡単な話じゃないか。
 世のハンターたちはどうやら「パーティ」なるものを組んで、面倒な人間関係に常日頃頭を悩ませながら狩りをしているらしいが、なんと馬鹿なことか。笑ってしまう。そんなことで悩んでいる暇があるなら、己の身体を鍛え狩りの腕を磨いて、一人でクエストをこなせばいいのだ。わざわざ手前から面倒に片足突っ込んで、それで他人に足を引っ張られただのなんだの言っているのだから、自業自得だ。お話にならない。
 だから、俺はずっとソロのハンターだった。たまにしようがなくて臨時のパーティを組むことはあったが、それでも基本は単独行動。誰かがメインターゲットを達成すれば良いだけの話。それをいかに効率的に達成するか。それには、自分はどう立ち回ればいいか、考え動く。ただ、それだけ。
 狩りなんて、「過程」はどうでもいいのだ。誰がどんな攻撃をして、誰がとどめをさして、サブターゲットを達成して、雑魚を何匹倒して……だの、そんなことはどうでもいい。重要なのは「目的(メインターゲット)を達成した」という「結果」だけ。
 モンスターハンター。大金と名誉に命を賭してモンスターを狩る者。
 相手を殺すか自分が死ぬか。常に死と隣り合わせの危険に晒されながら、もの言わぬ相手と命のやり取りをする。
 なんとも味気なく、殺伐とした商売だが、だからこそ自分には合っていると思っていた。殺伐としてる分、面倒が少ないしな。

「……………………」
 なんで、この仕事を請けちまったのかなあ。
 確かに、報酬額は、この俺でさえ目と耳を疑うような額ではあった。
 だが、まめにヤバい依頼――伝説級のモンスターを狩ったりしていればそう非現実的でもない金額だ。確かに、難易度はぐんと高くなるが、不可能な話ではない。
「騙されたよな、絶対」
 騙されたというか、あの村長の仕掛けたクモの巣に運悪くひっかかった獲物というか。
 金額の馬鹿でかさに、ちょっとは疑うべきだった。
 ――簡単さね。あの子とパーティを組んで、あの子の狩りをサポートしてあげておくれ。
 何にも難しいことはなかろう? お前さんくらいのハンターともなれば、な~あ?
 そう言って、ニコニコ人が良さそうに笑ったあの村長……。いつか、キュッと絞める。ぜってー絞める。
 こんなに面倒くさい仕事だと初めに知っていたら、請けなかった。
 ターゲットが女だと言うので期待したら、まだ子供だし。俺は子供には興味ない。それなのにご丁寧に村長とコート着た猫に「手を出したら暗殺する」と壮絶な笑顔で言われるわ、出すか馬ァ鹿と思ってたらこの女がまた危機感なくて寒いと言っては俺のベッドにもぐりこもうとしてくるわ嬉しいと抱きつこうとしてくるわこれはどういう趣向なんだ? 村ぐるみで俺を陥れようとでもしてるんじゃないのか。あるいは何だ、俺の理性を鍛えようとかそういうアレか?
 ともかく、見た目の通り狩猟能力は貧弱、モンスター見たらすぐ逃げる、ガンナーのくせにボウガンの弾の特性も理解してない、気付くと何か採取してる(しかも虫の死骸とかを拾うと俺によこしてくる)、方向音痴、逃げる方向も音痴(モンスターが突進してくる方に突っ込んだり)、攻撃しろと言うと「うわあああああ」みたいなことを叫びながらモンスターに体当たりしてるしあああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおめんどくせぇめんどくせぇめんどくせぇめんどくせぇ!!
 一回、お前はベースキャンプにいろと言って俺一人で依頼を片付けたこともあるのだが、その後村長に呼び出されペナルティを食らった。ペナルティの内容は言えない。が、あの村長、あんなナリと顔してて筆舌に尽くしがたいくらいえげつないことをさらっとしてくる、とだけ言っておく。拷問だ、拷問……。その後一人風呂で村長の悪口を言っていたらまた呼び出されて追加ペナルティ。ていうかいつからいつまでどこでどんな風に監視されてるんだと考えると背筋が冷える。俺にプライバシーはないのか。風呂でひとりで愚痴るのも許されないのか。
 そんなわけで、アルフォンスをのけ者にして俺がクエストを片付けてしまうことも出来ない。あくまで、“サポート”でないといけないらしい。ああ面倒くさい。死ぬほど面倒くさい。なんたって、この白うさぎ、ドスギアノス相手にでも殺されかけるのだ。どうやってサポートすればいいんだよ。俺も一人ならばノーダメージなところを、白うさぎを守りながらだと意識が半分以上彼女に持っていかれるものだから、集中できず食らってしまう。

「お前が上位ハンターになるまでって、一体いつまでなんだよ」
 俺の右腕に頭を預けて無防備に眠るアルフォンスの髪をぐしゃぐしゃして、言ってみる。もちろん、返事はない。
 ――契約は、アルフォンスが上位に上がるまで。
 コイツが上位に上がるなんて、一体何年後になるんだ……と考えると、少々頭が痛い。

「くらーざーさぁん……」
 ふと、小さな声で呼ばれ、俺は起こしてしまったのかと慌てて目線をアルフォンスに落とす。
 …………寝言か。
 いい気なもんだぜ。

* * *

 しんしん、と高いような低いような不思議な音色をたてながら、キャンプの外は雪が降っている。
 俺はいつものようにキャンプの軒下に火を焚き、そこに座って番をしようとしていた。
「クラウザーさん、何してるの?」
「見て分からないか? 火を起こしてるんだよ」
「どうして?」
「……お前のとこの教官は、お前に何を教えてきたんだ……。まあいい。こうしておくとな、モンスターは近寄って来ないんだよ。ベースキャンプは安全だ、とギルドでは言われて久しいが、誰がそう決めた? 念には念を。それが自然界で生き抜く法則だ」
「……そうなんだぁ」
「覚えておけよ、俺がいなくなっても……、」
「やだ」
「?」
「いなくなる、なんて言わないで」
「あのなぁ、ハンターなんてやってたら、いつ死んだっておかしくないんだぞ」
「やだやだ。もう、大事な人がいなくなっちゃうのは、やだ」
「大事な人ってなぁ……」
「クラウザーさんは、大事な相棒だもん」
「そう思ってるのは、お前だけかも知れないぞ」
「いいよ、それでも。私にとっては、大事だから。クラウザーさんが、同じように思ってくれてなくてもいいよ。私は、クラウザーさんがいなくなるのは嫌だよ」
「…………」
 俺は何とも答えづらくなって、黙って火に焚き木をくべた。
 何も言わないのもアレなので、俺は外で焚き火の番をしてる、と言って、彼女から目を逸らした。
 キャンプのベッドに腰掛けて少し悲しそうな顔をしていたアルフォンスは、ふと俺の頭上に舞い落ちるものに気付いたらしい。
「雪」
「……ん?」
「雪、降ってる」
「そうだな。さっき降ってきた」
「そんなところにいたら、寒いよ」
「もう慣れた」
「駄目だよ、風邪引いちゃうよ」
「あのな、俺、そんなにヤワじゃないんだけど」
「キャンプに入ったほうがいいよ」
「火が消えちゃうだろ、番してねぇと」
「じゃあ、私が番する」
「……お前は、寝てろ」
 たかだかギアノス5頭倒すのに、一日以上かかるとはな。まあ仕方ない。ギアノスの群を探すのに手間取ってしまい、今日は見つけられなかったというだけの話だ。今夜はゆっくり寝かせて、明日に備えさせないと……。
「私も、一緒に番、する!」
「はぁ!?」
「一人より、ふたりだよ!」
 相変わらず突拍子もないことを言い出す奴だ。白うさぎが今夜寝ないで明日がフラフラな方が、俺にとっては胃が痛いんだが、そこのところ理解してくれているのだろうか。
「お前が寝ないと、俺が困る」
「じゃあ、クラウザーさんと一緒に寝る」
「はぁああああ!!?」
 いかん、発想が斜め上過ぎてついていけない。どの理屈をどうこねたらそういう発言になるのか、お前の脳内の思考回路を図説つきで説明してくれよ。
「クラウザーさんが寝ないなら、私も寝ないで一緒に焚き火の番、する!」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
「相棒だもん!」
「相棒だからこそ寝てくれ!」
「じゃあ、クラウザーさんと一緒に寝る」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!」
 なんて物分りの悪い女だ! なぜアルフォンスが寝て俺が起きているのが理にかなっているのかなどを懇切丁寧に説明したが、俺が起きているなら起きている、自分が寝るのなら俺も寝ないと承知しないの一点張り。
 この後もひたすら押し問答は続いたが、話は平行線で、両者の主張が歩み寄ることはなかった……。
「あのなあ……!」
 俺はそんなに気の長い方ではない。いい加減頭にきて怒鳴ると、アルフォンスはびくりと肩を震わせた。
 泣くのかと思ったが、気丈に唇をかみ締め、押し殺した言葉を紡ぎ出した。
「だって……ひとりで……冷えちゃう」
「は?」
「ひとりで、いたら、クラウザーさん、の背中が、ひえちゃう、から」
 アルフォンスはベッドから立ち上がって、俺のところに来た。座っている俺の背中から腕を回して、抱きしめてくる。温かい、肌の感触が、装備越しに伝わってくる。
「平気だよ、火焚いてるんだし」
 俺は、なんとなくどぎまぎして、慌てて火の中に焚き木をいくつか放り込んだ。
「前が熱くて後ろが寒いと、風邪を引くよ」
「……そうしてると、お前の背中が寒いだろうが」
「私は、ポッケ村の人間だから。寒いのは大丈夫」
「もう……いいから、大人しく寝てくれ……」
「クラウザーさんも寝るのなら、ベッドで寝る」
 こういう一連の発言や行動が、誘ってるわけじゃなくて素なのだから恐ろしい。この白うさぎは俺以外の男の前には出してはならないな、断じて。
 ……だが、一体俺のことをなんだと思っているのだろうか。俺も、男なんだがな。一応。
「そしたら、焚き火が消えちゃうだろ」
「じゃあ、クラウザーさんと一緒に起きてる」
「…………」
 あーもー……。
 ――ベースキャンプには、友好的モンスター(アイルー)以外の一切のモンスターが出入りできない――っていう、ギルドの話を信じるか? 確証もないのに?
「モンスターが襲ってきたら、どうする気だ」
「戦うよ! クラウザーさんと一緒に!」
「本当かよ……」
「クラウザーさんの背中は、私が守るって、決めたんだもん」
 そう言って、背中から回した腕をぎゅうぎゅう締め付けてくる。
 とりあえず今までコイツに背中を守られた記憶は一切ないんだが、まあいい。
 その言葉で。ハンターとして戦う意思があるのなら、それで――いいか。
「……なら、守ってみせろ」

 そして……今に至る。
 あれだけ「背中を守るよ!」と言っていたが、いつの間にか俺の腕を枕にして俺の腹側で寝ていた。装備がごつごつ当たって痛いと言うので脱いでしまった。そのため逆にさっきより背中が寒いのだが。
 アルフォンスは幸せそうな顔で寝入っている。何か腹立たしくて、もう一度その髪の毛をぐしゃぐしゃする。
 うにゅ~……みたいな間の抜けた声を出しながら、嫌々をするように頭を俺の胸にこすり付けてくる。
 ………………。
 とりあえず、どこの馬の骨とも知れない俺に、絶大なる信頼を寄せてくれていることは、よく分かった。
 まだそう長い時間一緒にいたわけでもないのに、不思議な女だ。
 枕にした側と反対側の手を、アルフォンスの頬に添えようとして、脳裏に村長の声が響く。
「手を出したら暗殺」
 慌てて手を引っ込めるが、この状況もひょっとしたら暗殺モノなのではないか、とはたと思い至った。

 もう一度、安心しきって眠っているアルフォンスに、心の中で「いい気なもんだな」と毒づいて。
 まだまだ先は長そうだし、そろそろ適当――白うさぎじゃない愛称でもつけてやるか、と考えながら、俺は大きな大きなそれは大きなため息をついたのだった。



珍しく(というか初めて?)のクラウザー視点SS。
書き殴りですまない。

げっ、ちまちま編集してるの見られた\(^o^)/ はずかしー><

Comment

Post

管理者にだけ表示を許可する

Archive

Tags

Webclap

現在のお礼絵は 0枚 です
ちょっとしたメッセージ飛ばしたい時など
お気軽にご利用下さい


Search


Up Alert on Twitter

ブログ更新お知らせ兼アルBOTです。
フォロー/リムーブはお気軽にどうぞ。
(自動フォロー返しをしています)


▼特定のワードに対しリプライします▼
@m_h_m_n 今日のオススメクエスト
└現在はG1,G2,トレハン 59パターン


@m_h_m_n 今日の運勢
└モンハン占い 7パターン
他にも名前や挨拶などいくつかの言葉にリアルタイムで反応します。
Twilog

niconicovideo



Links


QR code

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。